<魚眼図>研究費は無駄遣い?
予算の無駄遣いをいかに減らすかが話題になっている。確かに、納税者として不要な事業の予算はカットしてほしい。地方に判断を任せられるものは任せてほし い。惰性で続けていた事業は勇気を持って中止をしてほしい。
しかし、研究費はそういう議論にはなじまないものである。
研究というもの はだいたいが失敗に終わる。研究者本人が成功するか怪しいと思っているものはほぼ確実に失敗する。本人は絶対成功すると思っている研究であっても大多数は 失敗する。10件研究して1件成功すれば万々歳。残りの9件は失敗である。失敗の9件の研究を無駄として取り除こうとしてはうまくいかない。10件を実施 したからこそ成功した1件が生じたのである。
自動車も飛行機もテレビもコンピュータも多くの失敗研究を経て発明された。ぽっと出てきた天才だけ によって発明されたのではない。
研究はギャンブルであり、多くの挑戦をしないと当たりくじを引くことはできない。成功すれば10件合わせた研究 予算をはるかに越えた効果が期待できる。研究への投資は全体として将来に元を取るというタイプのものである。もちろん研究者自身は自分の研究に責任を持っ て必ず成功させる覚悟で進めなくてはいけないが、それでも10回に1回しか成功しない。
冷静に見て世界の中で明らかに没落しつつある日本にとっ て、科学技術は数少ない生き残りの拠(よ)り所である。今回の無駄遣いをなくす動きの中で、決して削ってはいけない科学技術の研究費までが削られようとし ている。近視眼的に研究費を削減し続けると日本の未来はない。
(松原仁・公立はこだて未来大 教授=人工知能)
2009/11/19