<魚眼図>トップアマに勝つ
今年もコンピューター将棋の大会が連休中に開催された。昨年、渡辺明竜王というトッププロとボナンザというソフトが対戦して話題になった(ソフトは善戦したものの最後はプロが貫禄(かんろく)を示した)ことからもわかるように、いまの将棋ソフトは非常に強い。
筆者はアマ五段なのだが、将棋の実力ではなくコンピューターの実力(ソフトの思考方法がわかる)でソフト相手には強かったが、最近はまったく勝てなくなった。最強ソフトに勝てる人間はプロを含めて日本中でせいぜい数百人であろう。強くなりすぎて将棋ソフトの売り上げは落ちてしまい、喜んでばかりもいられないのであるが。
今回の優勝ソフトの激指(げきさし)と二位の棚瀬将棋が、エキシビションとしてアマの日本一のタイトルを持っている清水上徹氏と加藤幸男氏と対戦した。彼らはプロと比較しても遜色(そんしょく)のないほど強く、これまでソフトは何度戦っても彼らに勝つことはできなかった。それが今回は両方ともソフトが勝ってしまった。
これはコンピューター将棋にとって歴史的なことである。もちろんわれわれは勝つことを目指して頑張ってきたのだが、実際に勝つのを目の当たりにすると複雑な心境である(コンピューターは失うものが何もないが、人間は非常に大きい)。
今回の対戦は持ち時間が短いコンピューターに有利な条件で行われた。ふつうの条件ではまだアマトップの方が強いと思うので、ソフトの実力をさらに伸ばしていく必要がある。いずれにしろ、トッププロに勝つ日が視野にはいってきたのは確かである。意外とその日は近いのではないかと思っている。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2008/05/12