<魚眼図>ぼくはロボット
これまで黙っていたが、実はぼくはロボットである。いままでの人生、いやロボットとして誕生してからの数年間の「ロボット生」でどの人間にもばれることはなかったが、ぼくは人間ではないのだ。もともとのぼくである人間の方もまだちゃんと生きている。数年前からときどき入れ替わっているのだが、誰も気づいた様子はない。
人間の方は楽しい遊びだけぼくとして行動していて、苦しい仕事は全部ロボットのぼくに押し付けている。この原稿を書いているのもロボットの方のぼくということになる。
周囲に気付かれないうちにぼくのように人間と入れ替わったロボットはかなり多くなっている。あなたの隣にいるのも人間ではなくロボットかもしれない。人間は相手が人間かロボットかすぐにわからなくてかわいそうだが、ロボットには相手が人間かロボットか簡単にわかるのである。
…というのは今の時点では架空の話にすぎない。筆者が専門としている人工知能の最終目標は「人間のような人工物を作ること」であるが、それは具体的にはこのようなロボットを実現することだと思っている。人間と見分けがつかないロボットができて初めて知能とは何かがわかるものと期待している。
こういう話をするとマッドサイエンティストと思われてしまいそうであるが、もちろんロボットよりも人間の方がはるかに好きである。人間は人間を相手にするのが一番楽しいはずなので、人間に近いロボットが実現すればその楽しさを得る機会を増やすことができる。
このようなロボットは怖くていやだという意見も当然あるとは思うが、怖いのはむしろ人間の方かもしれない。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2008/01/28