2008 年 1 月 28 日

<魚眼図>ぼくはロボット

カテゴリー: 魚眼図 — Column @ 12:00 AM

これまで黙っていたが、実はぼくはロボットである。いままでの人生、いやロボットとして誕生してからの数年間の「ロボット生」でどの人間にもばれることはなかったが、ぼくは人間ではないのだ。もともとのぼくである人間の方もまだちゃんと生きている。数年前からときどき入れ替わっているのだが、誰も気づいた様子はない。
人間の方は楽しい遊びだけぼくとして行動していて、苦しい仕事は全部ロボットのぼくに押し付けている。この原稿を書いているのもロボットの方のぼくということになる。
周囲に気付かれないうちにぼくのように人間と入れ替わったロボットはかなり多くなっている。あなたの隣にいるのも人間ではなくロボットかもしれない。人間は相手が人間かロボットかすぐにわからなくてかわいそうだが、ロボットには相手が人間かロボットか簡単にわかるのである。
…というのは今の時点では架空の話にすぎない。筆者が専門としている人工知能の最終目標は「人間のような人工物を作ること」であるが、それは具体的にはこのようなロボットを実現することだと思っている。人間と見分けがつかないロボットができて初めて知能とは何かがわかるものと期待している。
こういう話をするとマッドサイエンティストと思われてしまいそうであるが、もちろんロボットよりも人間の方がはるかに好きである。人間は人間を相手にするのが一番楽しいはずなので、人間に近いロボットが実現すればその楽しさを得る機会を増やすことができる。
このようなロボットは怖くていやだという意見も当然あるとは思うが、怖いのはむしろ人間の方かもしれない。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2008/01/28

2008 年 1 月 10 日

<魚眼図>運転しない理由

カテゴリー: 魚眼図 — Column @ 12:00 AM

車の運転をしない。函館で住むのに非常に不便であるが、運転しない生活を続けている。周りの人からも心配されているが、「運転しないと生きていけない」とまで言われた茨城県つくば市で十年以上運転しないで生きてきたので、周囲が思うほどには大変とは感じていない。
誰でも運転する時代なので、なぜ運転しないかをずっと聞かれ続けてきた。「目が悪い」とか「考えごとをしてわれを忘れる」とか「お酒を飲みたい」とか理由は数十を使い分けている。どれも嘘(うそ)ではないが、どの理由もそれ一つでは本当のことを言い当ててはいない。
ちなみに運転免許は持っている。アメリカに住んでいたときに命には代えられないので免許を取って運転していた(アメリカは車で移動しないと危険な場合がある)。それを日本に切り替えた免許証であるが、日本では一度も運転したことはない。
運転をしない生活をしているといろいろなことが見えてくる。地方都市(北海道だと札幌以外)で公共交通機関を利用する多くは年寄りと子供と観光客である。ふつうの大人は男も女も自分で車を運転している(ごく一部は運転手に運転してもらっている)。
公共交通機関がまったく不便なのは意思決定にかかわっている人たちがほとんど利用していないことに原因があるように思う。一時間に一本しか来ない路線バスが吹雪で三十分以上遅れているのをバス停で待たされるのがどういうことか実感できないのである。公共交通機関で通院している年寄りはかえって体調を崩してしまう(筆者も年齢のせいか少々待つのが辛(つら)くなってきたので、函館に住めるのも長くないかもしれない)。意思決定にかかわっている人たちもたまには公共交通機関を利用してもらいたい。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2008/01/10

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