<魚眼図>ボナンザショック
三月に将棋のトッププロの渡辺竜王とトップソフトのボナンザの公開対局があった。コンピューターが得意とする十秒将棋(一手十秒以内に指す)ではなく、持ち時間二時間という本格的なものである。結果は人間が貫録を示して勝利した。
対戦の前は、コンピューターが負けるのは当然として、みっともない負け方をしないでほしいと思っていた。開発者を含めてコンピューター関係者みんながそう思っていたはずである。ボナンザは強いソフトではあるが、アマ強豪との公開対戦ではあっさりと連敗していた。まだトッププロはかなり遠いという見方が一般的であった。
ところが、実際にはボナンザが大善戦した。中盤まではいい勝負で、渡辺竜王も途中では不利を自覚していたそうである。数多くのプロ棋士が観戦していたが、彼らの形勢判断が分かれるぐらいの接戦だった。
ボナンザは普及版をかなり改良した上に高速のコンピューターを使ったので、これまでよりもかなり強くなっていた。無理な攻めをしなくなって、ほとんど悪手を指さなかった。この対戦の棋譜を見たプロ棋士の多くがボナンザの強さにショックを受けたらしい。
ここまで来ると、何回か対局すればコンピューターが勝つ可能性があると言ってよい。いよいよ時間の問題になってきた。そのXデーに備えて、その後にいかにコンピューターが人間を助けて将棋を発展させていくかを考えておく必要がある。今回の対局でもボナンザはプロ棋士が思いもつかない手を指した。そのことが今後の人間とコンピューターの協調のあり方を示唆しているように思う。(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2007/04/26