2007 年 2 月 26 日

<魚眼図>不具合の割合

カテゴリー: 魚眼図 — Column @ 12:00 AM

今年のセンター入試が終わった。受験生にとってきわめて重要なイベントであるが、試験監督を務める教員にとっても非常に疲れるものである。特に英語のヒアリングの担当になると大変である。ヒアリングの試験では校内放送で英語を聞くのではなく、受験生は一台ずつ配られた装置を使って聞くようになっている。この装置は一度しか聞けない(聞き逃したところを聞き直すことができない)特殊なものである。試験監督の教員は無事に完了させるために神経を使うことになる。
全国で数百人の受験生が装置の不具合でちゃんと英語を聞くことができずに再試験を受けたそうである。新聞やテレビでは数百台もの装置に不具合が生じたことを大きく取り上げて非難していた。その取り上げ方には納得がいかなかった。
センター入試は全国で数十万人が受験している。英語はほとんどの人が受験しているだろうから、装置も数十万台存在することになる。数十万台の中で数百台が不具合というのは、全体の○・一%程度が不良品だったことになる。これは決して悪くない数字である。家電製品にもこれぐらいの割合で不具合は生じている(そのような不良品はメーカーで交換してくれる)。悪くない数字なのになんでこれほど非難されなくてはいけないのであろうか。
これ以上不具合の割合を減らすには莫大なコストがかかる。不具合を数百台から数十台まで十分の一にしようと思えばコストは十倍かかる勘定である。不具合をゼロに近づけようと思ったら一台が数十万円以上してしまうかもしれない(しかも使い捨てである)。もちろん不具合は少ない方がいいが、小さいながらもある確率で不具合が生じることを前提とした反応がマスコミにも望まれる。(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2007/02/26

2007 年 2 月 6 日

<魚眼図>ウィニー判決

カテゴリー: 魚眼図 — Column @ 12:00 AM

昨年十二月、ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」開発者の裁判第一審の判決が出た。有罪であった。事件のもとは、ウィニーがウイルスに感染したために、多くの秘密の情報が漏洩(ろうえい)して大騒ぎになったことである。特にお役所の世間に漏れてはいけない情報がいくつも流出したことが大きかった。
以前にこの欄でも触れたように、悪いのはウィニーではなく、ウイルスの方である。同様に悪いのは、安全に対する意識が低く、ウイルスに感染したままのウィニーを放置していたユーザーの方である。ウィニーはちゃんと使えば、簡単にお互いの情報を交換できる非常に優れたソフトウエアなのである。
ウィニーの摘発がお役所の情報漏洩に端を発しているのは明らかだが、裁判の表向きの理由は、不法コピーを広げた(著作権法違反ほう助)ということになっている。この表向きの理由もおかしい。よく言われる比喩(ひゆ)であるが、包丁が犯罪に使われる可能性があるからという理由で包丁を作った人を罰するのに等しい。
第一審の判決は、裁判所がコンピューターのことをまったく理解していないと思わざるをえない。あるいはお役所を混乱させた責任を取らされたと思うしかない(その責任はウィニーではなくお役人にあるにもかかわらず)。
こんな判決が確定してしまっては、開発者は新しい優れたソフトウエアを作ることができなくなってしまう。悪用されたら、開発者が責任を取らされるからである。日本の情報処理の未来は暗黒である。第二審以降で正しい判断がなされることを切に願っている。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2007/02/06

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