<魚眼図>仮想と現実
米国のボストンで開かれたシググラフというCG(コンピューター・グラフィックス)の国際会議に参加してきた。毎年米国で開催されるこの分野の最大規模の会議で、今年も世界中から数万人が参加していた。CGとはコンピューターを用いて静止画や動画を作成する技術で、最近はテレビや映画でごく普通に使われている。
いかに魅力的に見せるかという技術の会議なので、発表展示が視覚的に見栄えがするものばかりなのがうれしい。この学会で公開された技術が数年後には世の中に出回る可能性が高いとあって、企業からの参加者が多かった。また日本からの発表者や参加者も多かった。日本の若い人が多数頑張っているのは心強い次第である。
コンピューターの性能が向上したこともあって、CGの技術は最近非常に進歩している。みなさんもテレビや映画でおなじみだと思うが、教えてもらうまで現実の映像かCGの映像かわからないぐらいによくできている。この学会でも、船が海を走るときにできる波が本物そっくりなのに(しかもその計算が非常に速いことに)驚かされた。コンピューター上の仮想の世界が現実の世界にずっと近づいてきたと言えよう。
しかし仮想世界はあくまで仮想世界にすぎない。大事なのはもちろん現実世界で、現実世界をうまく実感させるために仮想世界が存在する。変な言い方であるが、本物よりも本物らしく見せるというところにCGの価値がある。CGの技術がさらに進歩することによって、実感できる現実世界が広がっていくことを期待したい。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2006/08/21