2006 年 7 月 28 日

<魚眼図>こども未来博

カテゴリー: 魚眼図 — Column @ 12:00 AM

二十九日から八月二十日まで札幌の月寒ドームで「こども未来博」というイベントが実施される。札幌商工会議所の百周年を記念した企画である。そのイベントの目玉の一つがロボット展示である。これだけの規模のロボット展示は北海道では初めてのことだと思う。昨年の愛地球博に出展された(そして観客が数時間の待ち行列をつくった)ロボットのいくつかも見ることができる。期間限定ではあるが、有名なトヨタやホンダのロボットもお目見えすることになっている。ちなみに筆者の属する公立はこだて未来大学のロボットも出展される。
テレビや新聞や雑誌などでロボットを目にされることは多いと思うが、実際のロボットの印象は映像とはまったく違うものだと思う。ロボットは精密機械なので、毎回うまく動かすのは非常にむずかしい。映像で見ているのは、何度も動かしてうまくいったときを撮影したものである。目の前で見ていると、うまく動かないで、たとえば倒れてしまうこともあるだろう。それが現在のロボット技術の実情であり、そのことも含めて実感していただきたい。ロボットだけでなく、周りで一生懸命にロボットの調整をしている人たちの姿にも注目してほしい。ロボットを動かしているのは、あくまで人間なのである。
ということで、ぜひ「こども未来博」に足を運んでいただきたい。特にこどもたちに世界の最先端のロボットを身近に感じてもらいたいと願っている次第である。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2006/07/28

2006 年 7 月 13 日

<魚眼図>将棋を指す脳

カテゴリー: 魚眼図 — Column @ 12:00 AM

プロ棋士の組織である日本将棋連盟と世界的な基礎研究所である理化学研究所が共同して将棋プロ棋士の脳の研究に取り組むことになった。プロ棋士が将棋を指しているときに脳がどのように活動しているか探ろうというものである。これまで心理学的な研究は筆者らによってなされているが、脳科学的な研究は初めてになる。
具体的には実験にfMRIと呼ばれる装置を使う予定になっている。この装置は脳の中の血液の流れを観測するもので、そのときに脳のどの部分が活発に働いているかを知ることができる。もともとは医療器具である。この装置の発明によってこれまで謎だった脳の活動の様子がわかるようになってきた。
しかし使い方はかなり大変である。まず横になって小さいトンネルの中に寝た状態にならなくてはいけない。しかも実験中は動いてはいけない。せいぜい一時間までしか続けられない。装置の都合で断続的にかなり大きな音がするのに耐えないといけない。
こんな環境でプロ棋士がちゃんと将棋を指すことができるか心配であるが、若い人であれば事前に何度か経験してもらえれば大丈夫だと思う。
実験の実施にはいろいろとむずかしい点はあるものの、この研究によって新たな興味深い知見が得られることを期待したい。子どものころから将棋ばかりしているプロ棋士の脳が普通の人以上に活発に働いていることがわかるだけでも、いわゆる「ゲーム脳」にまつわる説がまったくの間違いであることがあらためて確認できるであろう。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2006/07/13

2006 年 7 月 6 日

<魚眼図>ロボカップ(2006掲載)

カテゴリー: 魚眼図 — Column @ 12:00 AM

今回のワールドカップは日本にとって残念な結果に終わってしまった。というのは人間のサッカーの話で、ロボットのサッカーの方は日本がかなり頑張ったのである。
ロボットのワールドカップというべき「ロボカップ」の第十回国際大会がドイツのブレーメンで六月中旬に開催された。一九九八年に名古屋で第一回を開いてから毎年いろいろな国で実施しており、ワールドカップの年は同じサッカーということで、その開催国でロボカップも開催しているのである(九八年はフランスで、二○○二年は日本・韓国でそれぞれ開催されている)。ロボカップはサッカーを例題にしてロボットとコンピューターの技術を促進することを目指したもので、災害救助への応用(レスキュー)や子どもの教育(ジュニア)も同時に進めている。
三十六カ国から二千五百人もの人がロボカップに参加した。ソニーのアイボのリーグ、二本足ロボットのリーグなど十種目以上で世界一を目指した戦いが繰り広げられた。ワールドカップと異なりチームは国の代表ではなく、大学や企業などの組織である。ときには複数の国の合同チームも参加している。ということで国同士の対抗戦ではないが、ドイツや中国などと並んで日本はかなりよい成績を収めることができた。
来年はアメリカで、再来年は中国で国際大会が開かれることになっている。サッカーを通じたもう一つの国際交流を続けていきたい。その過程で人類の幸福に貢献できるロボットやコンピューターの技術が開発されることを願っている。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2006/07/06

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