2006 年 3 月 24 日

<魚眼図>ウィニー問題

カテゴリー: 魚眼図 — Column @ 12:00 AM

ウィニーというソフトの話題がまた世間を騒がせている。ウィニーとはインターネット上で他人とファイルを交換するためのソフトである。東大元助手の金子勇さんという人が開発した。無料で手軽に使えることから多くの人がファイル交換用にこのウィニーを使っている。
最初の問題は、このウィニーを使って著作権的に問題のあるファイルをコピーすることであった。ウィニーの作者である金子さんは不正を可能にするソフトを作ったということで、著作権法違反ほう助罪の疑いで逮捕されてしまった。ウィニーが不正用のソフトということではなく、不正に使えるということで罪に問われたのである。裁判はいまも続いているが、金子さんが有罪なのかは疑問である。犯罪に使われる可能性があるという理由で包丁を作った人が罪に問われるべきなのであろうか。
その次の現在の問題は、このウィニーが知らないうちにウイルスソフトに感染して、公開したくないファイルまで外に流出してしまうということである。個人のプライベート情報が流れただけでなく、警察や自衛隊などの国家機密や会社の社外秘情報も流れて大問題となってしまった。総理大臣がウィニーを使わないように、と言うほどである。これも悪いのはウィニーではなく、ウイルスソフトである。さらにはウィニーがウイルスに感染したことに気付かないユーザーが一番悪い。これでウィニーが非難されるのであれば、あれほどウイルスソフトが蔓延(まんえん)しているウィンドウズがもっと非難されてしかるべきである。
ウィニー問題は日本のインターネット社会がまだまだ未熟であることをよく示していると思う。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2006/03/24

2006 年 3 月 14 日

<魚眼図>情報の授業

カテゴリー: 魚眼図 — Column @ 12:00 AM

高校で情報の教育が始まっている。生徒たちに何を教わっているのかを聞いてみると、インターネットの検索やメールの読み書きやワードやエクセルといったソフトの利用の仕方というのがほとんどである。そんなことではないかとは思っていたものの、これは非常に由々しき事態である。これらはコンピューターの使い方の教育であって、まったく情報の教育ではない。ただでさえ少ない授業時間を使ってこんなつまらないことを教わっていると思うと胸が痛む。
世の中でも誤解している人が多いが、情報教育とはコンピューターの使い方の教育ではない。数学や物理などと同様に情報は一つの学問対象であり、情報を学ぶための一連のカリキュラムがちゃんと存在するのである。高校ではその入門として「情報とは何か」という基本中の基本をしっかりと教えてほしい。そうしないと日本と外国の差はますます開くばかりである。情報でも日本は欧米だけでなくインド、中国、韓国に対してかなりの後れをとっている状況なのだ。
メールの読み書きやワードの使い方はあえて授業で教えるまでもない(インターネット社会の倫理についてはしっかり学ぶ必要がある)。もっとも、高校に本来の情報を教えることのできる先生がほとんどいないというのが大問題である。日本の大学で情報の教育が始まったのが遅いことに加えて、情報を専門的に学んだ人が高校の先生になっている例はまれである。他の専門の先生が情報を教えているので仕方なくエクセルの使い方でお茶を濁しているのが実際のところだろう。
日本がロボットを含めた情報で今後勝負をしていくためには、一日も早く高校の情報教育を正常化することが強く望まれる。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2006/03/14

公立はこだて未来大学 松原仁研究室
〒041-8655 北海道函館市亀田中野町116番地2
inquiry@matsubara-lab.net (@は半角に直してください)