<魚眼図>対戦禁止
将棋のプロ棋士の組織である将棋連盟が、プロ棋士と将棋ソフトの対戦を原則として禁止する通知を出した。ハンディ無しの平手戦だけでなく、ハンディ有りの駒落ち戦もだめということである。未承認で対戦したプロ棋士には除名を含む厳しい措置を取るとある。
この通知の背景は、将棋ソフトが一つ間違えばプロ棋士に勝ってしまいかねないまでに強くなったということである。プロ棋士相手に角落ちというハンディながら何回か勝ったこと、アマの全国大会でベスト16に入ったこと、若手のプロ棋士が平手の公開対局であわや敗北する一歩手前まで追い込まれたことなど、将棋ソフトの強さを示す事件が相次いだ。市販版より強い特別仕様版の将棋ソフトに勝てる人間は高々五百人程度しかいないだろう。
相手が弱いうちは応援していても、自分と同じ程度に強くなれば不安感を抱くようになるのは人間の感情として理解できる。まして自分の生活基盤を脅かされかねないとなると反発したくなるのも当然である。
既にコンピューターが人間より強くなったチェスの世界では、プロ棋士がそれまでと同じように尊敬を集めている。車より遅いからといって百メートル競走のチャンピオンを尊敬しないということはないのである。歴史の必然として近いうちに将棋でもコンピューターが人間より強くなるが、そのことによってプロ棋士の価値が下がるものではない。
今回の将棋の騒動は、これから人間とコンピューターがあるいはロボットがいかにうまく付き合っていくかを考える上でとてもいい例になっていると思う。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2005/11/18