<魚眼図>チェスのチャンピオンたち
最近チェスの元世界チャンピオンにまつわる大きなニュースがふたつあった。一つが以前この欄で取り上げたボビー・フィッシャーが、晴れてアイスランドに出国して自由の身になったという件である。
彼はアメリカ人でありながらアメリカ政府に盾突いて、お尋ね者になっていた。別件逮捕した日本の政府も扱いに苦慮していた。世界的な英雄なので釈放してほしいという要望が世界中から日本政府に寄せられていた。将棋の羽生さんが小泉首相に直接電子メールで寛大な措置を求めたこともニュースになった。アイスランド政府が助け舟を出して、日本の法律を守った形でアイスランドに出国できるようになったという次第である。
もう一つはガリー・カスパロフが引退を発表したという件である。彼はごく最近若手に負けるまで、長い間世界チャンピオンとして君臨していた。この二十年の間に負けたのはその若手とコンピューターのディープブルーだけという圧倒的な強さであった。
コンピューター相手に負けた人間として記憶されてしまったが、カスパロフ以外であればもっと早く簡単に負けていたであろう。コンピューターの挑戦から逃げなかったのも偉いと思う。彼に勝った直後にディープブルーは引退してしまったが、もし彼にリベンジの機会があれば結果がどうなったのか非常に興味深い。
ボビー・フィッシャーとガリー・カスパロフは、チェスの歴史上最強はいずれかといわれる二人である。引退した同士でぜひ対戦してもらいたいものである。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2005/05/13