<魚眼図>理系と文系
また子どもの理科や算数(数学)の学力低下が問題となっている。理科や算数を嫌いな子どもたちも増加している。進学にあたっても文系を選択する子どもが増えている。理系の子どもが危機にある。
日本は物的資源に乏しい国なので、技術を売り物にしないと食べていけない。次の世代を担うべき理系の子どもが危機ということは、世界の最先端の技術を維持できなくなって、その結果、国として経済的に没落してしまう危険が大きい。
理科や算数の授業時間や指導要領を強化するという対策が検討されているようである。しかしこれらの小手先の対策では効果は薄いと思う。理系の子どもが危機にある根本的な原因は、理系が文系に比べて将来にわたって報われないことにあるからだ。
学生時代の勉強は理系の方が文系より厳しい。実験や演習などで拘束時間も長く、最先端技術を身につけるのも難しい。なのに卒業してからの待遇は文系の方がいい。役人も出世するのは文系である。生涯賃金も文系の方が高い。理系は「好きなことを仕事にできただけでうれしいので、出世できなくても給料が安くても構わない」と言わされて、悪い待遇に甘んじている。
「日本の社会は文系が理系を搾取することで成り立っている」と喝破したのは、三十年前の高校時代の恩師だが、誰が否定できるだろうか。日本は文系が理系を差別していて、その差別があたかも存在しないかのように巧妙に隠蔽(いんぺい)されている社会であり、その差別がなくならない限り、理科離れはなくならない、ということだ。理不尽な現実を改善しなければならない。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2005/02/09