<魚眼図>災害時の携帯電話
日本の携帯電話の普及率は六割を超えている。赤ちゃんまで含めた全人口の六割ということなので、大人はだいたい持っている勘定になる(もっとも世界には普及率が九割を超える国もあるそうだ)。携帯電話の使い道も電子メール、カメラと広がってきた。若い人は携帯電話を時計代わりに使うようになっている。
最近岐阜県の大垣市で携帯電話を使った興味深い実験が行われた。地元出身ではない学生を被験者に選び、まず車で知らない出発地に連れていく。被験者は一人ずつどこか知らされていない目的地に向かって出発していく。どう移動するかは携帯電話を介して文章などの形で指示される。道に迷わずに目的地にたどり着けるか、どれくらいの時間で到達できるかなどを調べる。被験者の歩く後を観察者が追いかけていく姿は、刑事の尾行かストーカーに見えたかもしれない。
この実験は、土地鑑(かん)のない場所で地震などの災害にあったときに携帯電話の指示で適切な避難場所に誘導することを想定したものである。
いまは地震や大きな火災が発生するとみんなが通話しようとして通じにくくなる輻輳(ふくそう)という現象が生じてしまうが、技術の進展によって近い将来に輻輳が生じなくなると期待されている。そのときを見越して携帯電話の災害時の活用方法を模索しているのである。この実験では携帯電話の扱いに習熟しているはずの学生でも道に迷う例が続出した。これからやらなければいけないことは多い。
(松原仁・公立はこだて未来大教授=人工知能)
2004/03/03