<魚眼図>携帯電話は誰のもの?
携帯電話を非常時にどのように利用するかという研究の中で、ひとつ気がついたことがある。携帯電話の立場が微妙であることが、非常時の使い方に少なからず影響を与えているのである。
多くの人にとって携帯電話は私物である。通話料金は勤務先ではなく本人が払っている。仕事で必要であるとして勤務先から携帯電話を貸してもらっている場合は、私用には使ってはいけないことになっている。
しかし現実には私物の携帯電話をしばしば仕事に使っている(こういうときに、私物を仕事に使ってはいけないとあまり言わないのはおかしなことである)。携帯電話が好きか嫌いかにかかわらず、いまや仕事の上で必須(ひっす)になりつつある。しかしながら私物であるというのが微妙な立場、という意味である。
地震や火事などの非常事態は時間を選ばない。その時間が仕事中かそうでないかは偶然である。非常時の連絡にはやはり携帯電話が便利である。
同僚の安否を確認したくても、その人の携帯電話の番号がわからないことが結構多い。私物の携帯電話の番号を勤務先に届けておく義務はないからである。また常に身の回りに携帯電話を置いてある保証もない(私物だからどうしていようと自由である)。そもそも私物の携帯電話を使って非常時に自腹をきって勤務先のことを心配しなければならない義務はない(心配してあげるのは自発的な好意である)。
非常時に携帯電話を有効に利用するためには、輻輳(ふくそう)でつながりにくくなることも解決しなければいけないが、この微妙な立場もなんとかしなければならないだろう。
(松原仁・公立はこだて未来大教授=人工知能)
2003/12/03