2003 年 5 月 2 日

<魚眼図>世界チャンピオンのパソコン

カテゴリー: 魚眼図 — Column @ 12:00 AM

一九九七年にIBMの開発したコンピューターチェスのディープブルーが世界チャンピオンのカスパロフに勝った。このニュースは日本でも大きく報道されたので、覚えている人が多いと思う。筆者は将棋などのゲームのプログラムを研究しているので、ディープブルーの応援にニューヨークまで観戦に行った(日本人は私以外には一人だけだったと思う)。互角で迎えた最終戦でディープブルーが勝ったときは、うれしさと驚きが混じった複雑な心境だった。
ディープブルーはスーパーコンピューターにチェス専用の小型コンピューター五百十二台をつなげたものだった。最高の性能を有するコンピューターで一秒間に二億手を読むことができた(三分間で十四手先まで読んだ)。いわば機械が力任せで人間をねじ伏せた形である。
ディープブルーはその後引退した(スミソニアン博物館に置かれているそうである)が、その後もコンピューターチェスの開発は続けられている。世界チャンピオンクラスの人間とコンピューターチェスの対戦が最近二回行われた。どちらも引き分けに終わった。既に一度コンピューターが勝った後だったので大きなニュースにはならなかったが、実は前回とは大きく違うことがあった。前回はスーパーコンピューターだったのが、今回はそこらへんにある普通のパソコンだったのである。世界チャンピオンと引き分けたソフトも一万円出せば買うことができる。このことはひょっとしたら前回以上の衝撃かもしれない。
人間とコンピューターが敵対するのは今回を最後にして、これからは共にチェスの高みを目指すことになるだろう。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能)
2003/05/02

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