2002 年 3 月 22 日

<魚眼図>コンピューターの棋力

カテゴリー: 魚眼図 — Column @ 12:00 AM

将棋のプログラムの研究をしているので、「あなた自身はどれくらい強いのですか」とよく聞かれる。「アマ五段です」と答えると、相手は納得した顔をする。プログラムはそれを書いた人間が教えた通りに動く。そう聞くと、将棋のプログラムの強さはそれを書いた人間の強さを越えられないと思ってしまうかもしれない。しかし、そんなことはないのである。
例えば、四則演算はコンピューターの方が圧倒的に人間よりも速い。人間は「計算の方法」をコンピューターに教え、コンピューターは教えられた通りに計算しているのだが、計算は教えてくれた先生よりも速いというわけである。
将棋も話は同じだ。人間は「将棋の次の一手を計算によって決める方法」をコンピューターに教えているが、具体的な局面でその方法でどの手が選ばれるかは教えた人間にもわからない場合がある。市販されている将棋プログラムの中にも、プログラムの方がそれを書いた人よりも強いものがいくつも出てきている。
チェスでは五年前にコンピューターが世界チャンピオンに勝ったが、もしプログラムがそれを書いた人よりも強くなれないとすれば、世界チャンピオンより強い人がプログラムを書いたことになってしまう。そんなに強ければ、チェスのプログラムなど書かずにチェスのプロになっていただろう。
もっとも、やはりプログラムを書く人間は弱いよりは強い方がいい。弱いとプログラムが決めた指し手がいいのか悪いのか判断できないので、改良するのが難しくなってしまう。将棋のプログラムも筆者に判断できないぐらい早く強くなってほしい。
(松原仁・公立はこだて未来大教授=人工知能学)
2002/03/22

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