<魚眼図>コンピューター・チェス
かつて日本では、ゲームを研究対象とすることが社会的に認められていなかった。何事にもけじめをつけるのが好きな日本人としては、仕事と遊びは明確に区別すべきものなので、ゲームという遊びを仕事である研究の対象にするなどもってのほかだったのであろう。筆者は以前、通産省の研究所に勤務していたが、ゲームの研究を認めてもらうために非常に苦労した記憶がある。
コンピューターが発明されてすぐに欧米ではゲームを研究対象として取り上げた。特に、コンピューターのチェスを人間の世界チャンピオンに勝たせようという研究は非常に盛んに行われた。チェス自体は遊びであるが、コンピューター・チェスの研究から、広く世の中で使われている多くの成果が得られている。日本は欧米に比べてソフトウエアが弱いとよく言われるが、ゲームの研究を疎外してきたことも大きな理由の一つだと思われる。貴重な研究対象をみすみす見逃し続けてきたのだ。
数年前から日本でも「ゲーム情報学」というゲームを対象とした研究領域を提唱している。チェスは一九九七年にコンピューターが世界チャンピオンに勝利したが、コンピューターにとってチェスよりもむずかしい将棋や囲碁で名人に勝つコンピューターを開発することを目指している。また思考ゲームだけでなく、テレビゲームも立派な研究対象である。既存のテレビゲームの面白さを分析することによって、人気が出るテレビゲームを設計する方法論の確立を目指すのである。
コンピューターが効率を上げるための道具だった時代は終わりつつある。これからはエンターテインメント(娯楽)がコンピューターにとって重要な使い道になっていく。これからは堂々と、そして楽しくゲームを対象とした研究を進めていこう。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能学)
2001/12/21