<魚眼図>アトムへの道
ホンダが世界で初めて二本足で歩く人間型ロボットを発表して世間をあっと言わせたのはほんの数年前のことであったが、いまや数多くの人間型ロボットが開発されるまでになっている。
なぜ彼らは人間型のロボットを作ろうとしているのであろうか。ロボットに限らず、人間のやっていることを代行させるのに人間と同じような機械を作る必要はない。一度にたくさんの物を持たせたければ、腕は二本でなく三本でも百本でも用意すればいい。速く移動させたければ、二本足ではなくタイヤをつければいい。力仕事をさせたければ百馬力でも百万馬力でもあればいい。
それでも人間型ロボットを作っているのには理由がある。将来のロボットは家庭用になる。炊事や洗濯などの家事全般をこなし、人間の話し相手や遊び相手もこなし、医者や看護婦の役もこなす。そんな家庭用ロボットは人間と同じ形状で同じ体力でなければ不便である。家庭では人間のようにいすに座ったり、階段を上ったり、ドアのノブを回したりしなくてはならないからだ。
以上が工学的な理由だとすれば、もう一つの理由はより根源的なものである。人間とは何かという問いに対し、われわれは何千年にもわたって考え続けてきた。心理学や哲学のように人間を外から探求するアプローチと、脳科学のように人間を中から探求するアプローチがある。それらとは異なるアプローチが、人工的に人間のようなものを作ることで人間を理解しようというものである。人間型ロボットと比べれば人間がいかに偉大かが再確認させられる。鉄腕アトムへの道はまだ遠い。
(松原仁・はこだて未来大教授=人工知能学)
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<略歴>
まつばら・ひとし 2000年4月から同大システム情報科学部教授。コンピューター将棋や自立型サッカーロボットのソフト研究の先駆者。「鉄腕アトムは実現できるか?」など著書多数。函館在住。
2001/11/28